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老年看護学実習のここでは
- 実習の感想
- どんな事が学べるか学びを深める視点の持ち方
- 行動目標、計画の立て方のポイント
- 事前学習でしておいた方が良い事
これらを解説します。
老年看護実習でどんな事が学べるか学びを深める視点の持ち方
老年看護学の実習では、以下の事を特に学ぶよう意識してみてください。
①患者さんの歩んできた人生を大切にする
患者さんは長い人生を歩んできた、人生の大先輩です。その個人の歴史を大切にしてあげてください。
1人の年長者として、正しい言葉使い・態度で接してください。認知症の方の行動をバカにするような言動などもあってはいけません。
②残存されている力、回復する力を引き出す
今の時代、老年期といえど日常生活が自立していて、元気な高齢者もたくさんいます。できる事はたくさんありますし、残された力や、病気に打ち勝つ力もあり ます。
何もかも手を出してしまったり、力を引き出す介入ができないと、せっかくの残存能力を低下させてしまうことになってしまいます。
③老化による変化と、健康を障害されたことによる変化
患者さんの日常生活動作(ADL)の低下が見られた時は、それは老化に伴うものなのか、それとも疾患により何らかの作用があってのことなのか、のアセスメントが重要です。
それによって介入の仕方も変わってくるので、多種多様な変化を色々な側面からアセスメントしましょう。
④患者さんの楽しみを大事にする
高齢化により、一般的には友人関係、娯楽、道楽は少なくなる傾向にあります。(もちろん少なくなる人ばかりではありませんが。)
その上、病気にかかり入院 する、となると、より楽しみが減ってしまいます。患者さんの趣味など、楽しみな時間を増やす看護計画が立てられるといいですね。
日常生活動作の拡大や、ストレスの軽減、気分転換などの看護問題に繋げる事ができます。
⑤患者さんの社会的・家族的役割を知る
患者さんは社会的に見てどんな役割を担う年齢にいるのか、昔はどんな仕事をしていたのか(もしくはしているのか)、また家庭の中ではどんな立場だったのか、患者さんの役割背景を情報収集し、その役割をまた担えるよう関わりましょう。
老年看護実習の行動目標、看護計画の立て方のポイント
1日の行動計画は、老年看護学実習に限らずどの実習でも、患者さんの1日の過ごし方と、その時に必要な看護介入により変わってきます。
まずは患者さんの1日の過ごし方の情報を取り、そこから必要な介入を組み込んでいきましょう。目標は、以下の事を頭に入れて設定してみましょう。
例文ではありません。例文を書いてしまうと、それにとらわれてしまい、せっかくの学生の自由な表現を奪うことになりますので、以下のアドバイスを参考に考えましょう。自分で設定するプロセスが何より大事なのです。
①患者さんの人格を尊重したコミュニケーションが取れる
これは、自分の目標です。実習においての目標は、自分の目標を立てる場合と、患者さんの目標を立てる場合の二通りがあります。そこを必ず確認してから目標設定しましょう。
患者さんの人生観や個人史を尊重し、正しい言葉使い・態度で接する事を目標としましょう。
②患者さんが持っている力(価値観、人生観、生きがい、特技、趣味、残存した日常生活動作)を捉え、活かした看護計画を立案する。
老化、入院で低下しがちな患者さんの残存している能力を、保持し、拡大させるように働きかけましょう。
③退院後の環境を考えた援助
入院前はどこでどんな生活を送っていたのか、退院した後はどこでどんな生活を送るのか、情報を取りましょう。それによって患者さんのゴール(目標)が決まります。
例えばバリアフリーの家に住んでいる人、エレベーターのないアパートに住んでいる人(階段を登る)、介護者がいつもそばにいる人、日中1人になることがある生活の人、様々です。
その人その人の生活スタイルに応じて、ゴールを設定することが、個別性のある看護です。
④社会資源の活用を知る
高齢者医療確保法、老人福祉法、介護保険法、どんな法律の元で、どんな施設やサービスがあり、それをどう活用していくのかを学びましょう。
カンファレンステーマの見つけ方
カンファレンスは日々の患者さんとの関わりの中で疑問に思ったこと、悩んだこと、迷ったこと、などをテーマにしてください。
特に老年看護学実習の場合には以下のようなテーマがあがりやすいかと思います。
①認知症患者とのコミュニケーションの取り方
一言に認知症と言っても、たまに辻褄の合わない事を言うような程度の患者さんから、全く会話が噛み合わない度合いの患者さんまで様々です。
そして1人の患 者さんの中でも、その程度(度合い)は日々・時々、変化するものです。その患者さんとコミュニケーションを取る事は、時に難しく感じるかもしれません。
②介入を拒否された時
患者さんの体調、気分、または認知症などで、介入を拒否されることもあるかもしれません。
患者さんの情報と、拒否された時の状況などを発表し、メンバーだったらどうするか、どうしたら良かったと思うか、など意見を募ると、1人で考えるだけでは思い浮かばなかった解決策が見えてくるかもしれません。
③意欲低下の患者に対する日常生活動作拡大の援助方法
日常生活動作を拡大させ、入院前の状態にまで戻したい!という計画を立てたとしても、患者さんになかなか意欲がないと介入が難しいことがあります。
拒否と まではいかないけれども、どうも乗り気でない…そんな時はどうしたら意欲的に取り組んでくれるのだろうか?と、話し合ってみると色々なアドバイスを手に入れることができるかもしれません。
老年看護実習で学んだ事
2年次に特別養護老人ホームへ看護実習に8日間行きました。対象者と関わるときには、ケアプランの方向づけのために、対象者の
「核になるもの」
「生きている」
「より豊かに生きる」
という3つの視点から情報収集し、アセスメントをしました。
まず、「核になるもの」の視点では、対象者が今までどのように生きてきたのか、どのような考え方や価値観を大切にして生きてきたのか、というアイデンティティーについて情報収集をしました。
次に「生きている」の視点では、対象者のADLや心身の状態、バイタルサイン、基本的生活における援助の度合いなど、人間生命を維持するために大切なことについて着目しました。そして、「より豊かに生きる」の視点では、対象者の趣味や特技、娯楽、日常生活における習慣など、対象者が生活を豊かにするためにしていることについて着目しました。
そのように対象者と関わっていくなかで学んだことは大きく分けて2つです。
1つ目
個別性を重視し自尊心を尊重したケアを提供するためには、先述の3つに分けて収集した情報を融合させてケアプランを練ることが大切だということです。「核になるもの」を軸としたケアプランを立てることが個別性を重視した認知症ケアになり、自尊心を尊重することができます。
精神疾患やさまざまな既往歴がある場合には、それらを考慮することが個別性に基づいたケアになります。そして「核になるもの」をもとに、「生きている」視点でアセスメントした要素を加え、食事介助・排泄介助などの援助の度合いをはかります。
自尊心が高く、人に援助されることを嫌がる高齢者も多いため、このバランスを見ることは難しいことですが、大切なことだと思います。さらに、それらの情報に「より豊かに生きる」要素を加え、その人がその人らしく生きるために大切なことを見出します。
認知症の高齢者の多くが暮らす、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などでは、生活が単調になりがちで毎日テレビを見ているだけなど、同じことの繰り返しをしているような気分になってしまいます。
そこで、参加型のアクティビティを取り入れたり、高齢者のもつ特技を生かしてもらったりすることによって、生活にメリハリが生まれQOLが向上するのだと思いました。今後、超高齢社会が進んでいくにつれ、認知症の高齢者も増加していくことが予想されます。
そのような状況下でも、最期まで自分らしくいられるようなサポートをするために、一人一人に丁寧なアセスメントと細やかな看護をしていくべきだという事がこの看護実習の感想と学んだ事です。
2つ目
看護師は対象者と関わるときに、その家族や地域も巻き込み、包括的に対象者と関わることが大切だということです。施設と利用者の結びつきだけではなく、家族も一緒にケアに参加してもらうことのできるような環境づくりをするように働きかけることが必要だと思いました。
施設にいると、頻回の面会がない限り家族との関わりは薄くなってしまいがちです。しかし、大きな地域での行事が行われるときなどには、家族を呼び込んで参加してもらうことで、家族との関係を良好に保ちつつ、また利用者は家族と離れてしまったという意識を持つことを避けながら、安心して暮らすことができるのではないかと考えました。
個々の家族の都合もあり、なかなか実現は難しいと思いますが、地域を含んだ視点を持つことが大切な事を学びました。