基礎看護実習のレポート、記録の書き方のコツ
1.看護記録と実習記録の位置づけ
看護実践の一連の過程を記録したものは看護記録といわれています。
看護記録および診療情報の取り扱いは『保健師助産師看護師法』『個人情報保護法』をはじめとする法令によって規定されています。
看護記録は、患者(遺族も含める)からの請求があった場合に看護記録そのものを患者に示し、説明を行なうこと、または看護記録(看護要約を含む)の写しを交付することが求められることがあります。
看護学生の実習記録は実習目的を達成するための手段であり、公的な記録である看護記録とは異なっているため、原則として実習記録を開示する必要はないと考えられています。
しかし、開示を求めた患者の状況、病院の設置主体、当該地域の条例、実習記録の内容などにより、場合によっては開示しなければ穴らないことがあるので、実習記録の記載や取り扱いには十分注意をしましょう。
2.実習記録の記載に関する留意点
実習記録の記載に関する一般的な留意点を以下に示します。
1)記録用紙は、個人を特定する情報(住所・氏名・生年月日・病院・病棟名・家族歴や遺伝情報等)を可能な限り記載しない。
2)不必要な情報・不確実な情報は記述しない。
3)診療記録および実習記録は安易に複写しない。
4)カンファレンス資料等に利用するために複写した場合は、シュレッターにかけるなど適切に処分する。
5)個人が特定される可能性がある実習記録等の院外への持ち出しは原則禁止
する。やむを得ず院外に持ち出す際はルールに則る。(紛失・散逸の防止に努める・ファイルなどで管理し、第三者の目に触れないようにする)
6)実習目的以外に利用しない。
7)実習記録の作成にパソコンなどの電子媒体を使用した場合には、ハードディスクや機体にデータが残ることを考慮し、個人所有の電子媒体の使用は避ける。
8)実習終了後、不必要となった記録物やあメモ類はシュレッダーにかける、電子媒体は内容を消去するなどの処分を行なう。
9)実習終了後の実習記録は、学校のルールに則り適切に保管する。
※ 日本看護協会編(2011)日本看護協会看護業務基準集 2007年改訂版、日本看護協会出版会、125-126.
3.教員は実習記録の何をみているのか
1)自己表現としての実習記録
実習記録とは、ある状況に投げ込まれた学生の体験の総体ともいえるべきものが、おのおのの感情や思考力によってふるいにかけられでてくる、自己主張であり存在主張といわれています。
教員はそこから、学生の感性、情緒、考えが見出そうとしています。
その上で教員は、学生を成長する個人として、その成長を損なわないようにアプローチする上での手がかりを探っています。
したがって、学生自信が感動したこと、うれしかったこと、悲しかったことといった感情についても自由に記載しましょう。
2)思考の整理箱としての実習記録
学生のとらえた事実=学習体験はことば(実習記録)によって表現されます。
また、人間はことばによって思考するので、実習記録は思考の整理箱とみることができるでしょう。
教員は、学生が整理箱の中にどのような知識をどのように整理しているかを見ています。
看護過程の記録はこの典型です。
実習記録の中から、患者との関係性、看護の専門的知識を使えているか、視野の広がりの視点から確認し、必要な援助を探っています。
ときおり、実習記録(看護過程)のどこから手をつけていいかわからず、真っ白なまま、教員に相談できず実習が過ぎてしまっている学生が見受けられます。教員は、実習記録のできばえをよくするのが役割ではありません。
実習記録から、外から見えなかった学生を理解し、学習上の困難を発見し援助するために実習に付いていっています。
教員にわからないことをどんどん質問して、教えてもらいましょう。それが学生の役割でもあります。
3)メッセージとしての実習記録
実習記録は常に学生から教員や実習指導者に向かって投じられているメッセージです。
実習記録は、教員や指導者に見せることを前提にしていることを意識しましょう。教員や指導者とのコミュニケーションの手段として活用しましょう。
参考文献:中西睦子(1983)臨床教育論 体験からことばへ、ゆみる出版.
4.実習記録の例
基礎看護学実習Ⅱで受け持ち患者を持つことになった実習2日目の「毎日の評価」の記録の記載例を以下に示します。
例のように「毎日の評価」は、目標毎に、目標に対する評価や自己の学習への課題、学んだこと、考えたことを記入します。目標に挙げていないことでも、学びや気づきがあった場合は、記入してもかまいません。