患者が身だしなみを整えるための援助ポイント

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今回は、「患者が身だしなみを整えるための援助ができる」ついて説明します。身だしなみを整えることも、患者の心身の安定を保つために必要な看護ケアです。しっかり勉強して下さいね!

今回の学習目的
○身だしなみの意義を学ぶ
○身だしなみを整える時の観察点や注意点を学ぶ

このテーマで特に注目してほしいところは
○生活習慣を維持し続けることの大切さ
○本人が「心地よい」「人に見られても恥ずかしくない」ことが身だしなみの極意

やってしまいがちな勘違い
○寝ているだけだからと、昼間も入れ歯を装着しないままでいた
○髪を生乾きのまま臥床させ、寝癖がついた

目次

私たちは、当たり前のように朝起きて洗顔したり、シャワーを浴びたり、髪を整え、その日の行動や目的に合わせた服装や身なりを整え、仕事やレジャーに出かけます。

また、親から教えられ自然に身についた生活習慣や生活の不便さから、手洗いやうがい、鼻をかんだり、爪を切ったり、ひげや体毛処理を行っています。

以上のことから身だしなみは

  • 基本的生活習慣の維持
  • 一日の生活リズムを付ける行為
  • 健康の維持、増進
  • 社会的マナー
  • 気分転換や爽快感が得られる
  • 自分らしさを演出できる

などの意義があり、身だしなみを習慣的に行えることが、心身を健康に保てているかの指標にもなり得ます。

病気になって、体を動かすことが辛かったり、体が自由に動かせなくなると、朝顔を洗ったりシャワーを浴びたくでもできなくなったり、行動を起こす気力が低下してしまいます。

人は、やらなくなってしまうと、その生活に慣れてしまう反面、できない自分に自己嫌悪を感じ、更には自尊心の低下という悪循環をもたらすことさえあります。

看護師の大切なケアの基本は、日常生活を整えることです。「その人らしさ」を支え、ADLの向上だけでなく、精神活動の向上を含めて身だしなみを整えることは、意義のあるケアになります。

私、朝シャワーに入らないといられません!

入院したら朝シャワーは無理だわねえ。だったら、どうやって、身だしなみを整えたら気持ちよく朝が迎えられるかしら?朝の身だしなみでできることは何がある?自分に置き換えると、身だしなみで得たいことが判りやすいかもしれないわね

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身だしなみに関するケアを行うには、次のようなアセスメント情報収集が必要になります。

  • 疾患、病状(急性期か、回復~維持期か、終末期か)
  • 身だしなみを整えにくくする苦痛症状の有無(痛みやしびれ、麻痺、運動制限など)
  • 認知機能の把握(認知症の程度、日内変動の有無など)
  • 心理社会的問題の有無(うつやせん妄はないか、家族関係に問題はないか)
  • ADLの程度の把握
  • 本人の身だしなみの意識
  • 自宅での「身だしなみ」に関する活動
    • 歯磨きの回数や方法
    • 髪をとかす方法、物、時間
    • 身だしなみを整える場所
    • 洗顔方法、スキンケアの好み、
    • 好きな色、服装、材質など

病院にいると、「病人」という役割を患者は担うことにあります。手術前後など、ケアを集中的に行うために治療者がケアや処置を行いやすい服装になっていただくのは、ある意味TPOともいえます。しかし、それ以外では、患者さんがそれまでの生活を少しでも行えるように心配りをしていくことも、大切になります。

そんなに細かい情報も必要なんですね

その情報を取ろうと頑張るのではなく、会話の中から引きだすようにするといいわよ。患者さんは、病気だから我慢していることも多いはず。ケアをしている時などにちょいちょい聞いてみたり、ご家族と話したりして情報を積み重ねていけば大丈夫!

①洗顔、

朝、寝る前の洗顔は皮膚の清潔を守ると共に一日のリズムをつける意味で行う意義があります。

学生さんは、朝挨拶の際に、洗顔を済ませたかを確認し、できていないようなら患者さんのADLに合わせて、洗面所で行うか、ベッド上で行うかを判断し、洗顔を行います。

 
この時に、鏡を見てもらうことも意識づけます。顔を見るのが嫌なのは、本人がイメージしているボディーイメージとかけ離れていることでもあります。すっきりした顔になったことを伝えながら、髪の長さやうぶ毛等の気になることがあるかも確認してください。

また、リハビリの後や、汗をかいた後にも、洗顔の声掛けをします。

ウェットティッシュなどで顔や首の周りを拭くだけでも、爽快感と同時に、人に与える印象が変わります。

病院であっても、私たちが日常的に行っている身だしなみを整える行為を、忘れず声をかけることも、看護師の役割になります。

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②歯磨き、うがい

口腔内の清潔を保つと共に、爽快感が得られ、口臭を気にせず人と話す意欲につながるなどから行う意義があります。

口腔ケアも身だしなみの一つです。食後の歯磨きをはじめ、食事前のうがいも食事を美味しく食べるための準備になります。

また、口腔ケアには、入れ歯の装着も含まれます。

入院前まではきちんと入れ歯を装着していた方にとって、人前で入れ歯のない自分をさらけ出すことは精神的に辛いことです。

このことがきっかけで、人に会うことを嫌がったり、精神的に不安定になったりすることもあります。

忙しかったり、入れ歯の重要性を軽視しがちですが、人は笑ったり話したりする時、相手には歯が見えるものです。

一般的に“白い歯=さわやか=清潔”というイメージがあるように、入院したとしても、患者さんの中にはそのイメージを持っているはずです。

口腔ケアを行う時には、感染予防だけでなく、身だしなみとしても口腔ケアを考えるように意識して下さい。

実施するときには

  • 歯磨きや、うがいの実施
  • 口唇(特に口角)に歯磨きの膜や食残が残っていないかチェックする
  • うがいだけの場合には、口臭にも気を配る
  • 口腔ケア後、入れ歯を装着する(もちろん清潔な入れ歯を装着)
  • 口唇のひび割れなどが目立つときは、リップなどで保湿する
  • 患者さんにも鏡をみてもらう

などを行い、可能な限り身だしなみを整えます。

しかし、ここで注意して欲しいことは、口腔ケアの習慣は人それぞれです。

毎食後に歯磨きをする人は、年配の方はそれほど多くありません。そのため、無理強いをせず、場合によってはうがいと口腔周囲の清潔だけに留まることでやめてもOKです。

身だしなみは、毎日行うことに意義があるので、3食毎の歯磨きを受け入れ習慣化するまでは時間がかかると考えましょう。

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③衣服を整える、更衣する

衣服を整えることは、皮膚の清潔保持や爽快感を得るだけでなく、社会生活の中のTPOに合わせることの意義や、好みの色や柄の物をまとうことによる満足感も得られます。

更衣を毎日するかどうかは、患者さんに委ねる部分もあると思いますが、臥床がちな患者さんの場合には、朝一度は、乱れた病衣やパジャマのしわなどを伸ばして整えることを心掛けます。

また、車いすなどで移動する際には、身だしなみを整えることを心掛けます。

特に高齢の女性は、昔の教育をうけ、肌を露出することに羞恥心を強くもっておられる方も多いです。

病衣の裾が乱れないように気を付け、膝かけや上着をかけて移動します。病院内だから、忙しいからは、医療者側の都合です。

患者さんにとっては入院中は、病院内が社会生活で、色々な方に合う可能性があります。

また、病状が安定し、ADLが向上してきた患者さんには、家族と相談し、リハビリ用の服なども患者さんが好きな色を選んでもらうように配慮しましょう。

色は、パワーを持っています。好きな色やデザインをまとうことができたとかじる事で、患者さんの意欲も引き出されます。

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④手を洗う

リハビリや検査、トイレを済ました後は、必ず手を洗う習慣を身に付けてもらいます。

これは、身だしなみと共に感染予防を目的としています。

同時に、手を洗う場所には鏡があります。鏡を見ることで、身だしなみを整えてもらう意識づけを行っていきます。

また、手を洗った後に、保湿クリームをつけることも、声掛けして習慣づけていきます。

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⑤髪を整える

頭皮の清潔保持や爽快感を得るとともに、見た目の印象を整える意義があります。

朝、顔を洗うとともに、髪をとかすようにします。

臥床時間が長いと、髪が絡みやすくなりますし、毎日髪を洗えないため脱毛も多くなります。

そのため、一日に1回はブラッシングを行います。その時、痛がるようなら、頭皮が引っ張られないように髪を抑えてからブラシをかけます。

また、脱毛が多い時は、予め掃除機などを用意しておきます。髪が抜けてしまうことが怖くて、ブラシをかけるのが怖くなる方もいます。

女性の方の場合には、髪の結い方や、髪留めの色など、従来のその方が好きな方法で一日が過ごせるように心掛けましょう。散髪や美容室に行きたくないかの希望も確認してみて下さい。

洗髪後は、きちんと髪を乾かすようにしてください。生乾きの皮膚は細菌が繁殖しやすくなりますし、寝癖になってしまい、患者さんの気持ちが沈んでしまうことになります。

人の髪なんで結えません

できない部分をお手伝いすればいいのよ。それが、看護師のお仕事でしょ?できない部分をケアして、より良くする。でも、髪を結わく強さなどは練習しておいた方が信頼されるかもね。

⑥爪を切る

爪は皮膚を傷つける原因になるとともに、物をつかんだりする動作に不都合を生じます。また爪の長さは個人差があるため、爪の長さも、本人に確認して長さを調節するようにします。

身だしなみを整えることは、本人の個性を整える面もあります。

何度も切るのがめんどうだからと、深爪してしまうと、人によっては痛みが出現してしまうことも有りますし、爪が短い手を見ることで気持ちが沈むことも有ります。

足の爪も同様です。巻爪の場合には、自分で行わず、看護師さんと一緒に行って下さいね!

⑦髭剃り、体毛処理

体毛処理は、皮膚の清潔保持と共に、爽快感を得ることや、人に合う時の印象を良くする意義があります。

男性は髭剃りを日課にしているので、可能な限りその行為が続けられる方法を考えます。剃刀が難しくなった場合には、ご家族と相談して、電気剃刀を購入してもらい、より簡単にひげを擦れる方法を一緒に考えます。

あなたは、顔の産毛を気にするタイプですか?

このこだわりは個人差が強い面がありますが、産毛が目立つ時は、それとなくご本人に確認して、洗顔時などに産毛を軽く剃ることも考慮します。女性のご家族の方に、声掛けして行ってもらうのも良いと思います。

⑧履き物を整える

リハビリをする、どこかに行く時に靴は衣服と同じように大切なアイテムです。靴を履く事で、足の保護になりますし、気分転換にも役立ちます。

患者さんにとって、ベッド周囲がパーソナルスペースです。そのため、スリッパや履き物を揃えておくことは玄関に靴があることになります。

家で靴を揃えない方は、ベッドの脇も同じように揃えないことも多いですが、気が付いたら揃えておくようにします。揃える位置は、必ず患者さんが起き上がって腰かけた時に足が届く場所に揃えます。転倒転落事故を予防するためです。

また、何かをこぼしてしまったり、汚れてしまった時は、ご家族に相談してみましょう。人の足元の汚れを見て、その人を判断するという方もいるそうです。足元も、他人から見られるものだという意識を持って、患者さんの身だしなみを整えましょう。

まとめ

病院に入院していても、可能な限り身だしなみを整えて、それまでの日常生活行動を崩さず生活できるようにケアを考えてみて下さい。

同時に、今までできていた身だしなみ行為が、できなくなった時は要注意です。

心身に何らかの変化が起きた可能性があるからです。特に、認知力の低下や、うつ傾向の場合でも、身だしなみを構わなくなります。

普段やれることができなくなり、やらなくなるということは、それだけ重みがあるんだという意識で、その患者さんの身だしなみを整える行為を観察して下さい。

ただし、私たち看護師は、「やってあげる」のではなく、「生活を整える」「環境を整える」「意欲を引き出す」ことが大切です。それまでの生活習慣を保つためにはどうすればいいのか、身だしなみをしなくなった理由はなぜか、新しい身だしなみを習慣づけるにはどうすればいいかをアセスメントして、患者さん自身が主体的に行えるように援助することが大切です。気持ちよく、そしてその人らしく、病院で過ごせるように身だしなみを整えましょう!